「誤審か否か」だけでは見えてこない
選手がピッチで取るべきレフェリーとの距離
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
■未然に防ぐことの重要性
さきほど回り道をしているときに、小さい頃の記憶をひも解いていたら思い出したことがありました。
僕の故郷である山口県は、特産品の夏みかんの色にちなみ、ガードレールがオレンジ色なのですが、僕が住んでいた島は田舎なので、ガードレールがない道も多く残されています。中には、鋭くカーブを描く道の脇にも設置されていない場所があり、川はむき出しになっていました。
ある日、そこで事故がありました。浅い川なので、確か大きな事故ではなかったと思いますが、数日後にはそこにガードレールが設置されていました。
子供心に、なぜ事故が起きる前に設置されないのかなと思った記憶があります。今ではなんとなく、その事情も分かりますが、僕たちがピッチの中でしなくてはいけないのは、そうした「なぜ前もって……」と思うようなことをなくしていくことです。
未来に何が起こるかは分かりませんが、起こりうるあらゆる可能性を一つひとつ明確にしていき、必要であれば、事故が起こる前にガードレールを設置しておかなくてはいけないのです。サッカーにおいては得てして、それを怠ったところで、事故は起こるものだからです。
裁く側と裁かれる側。それに抗議する者とされる者。そうした構図だけでなく、選手とレフェリーとの付き合い方も少し目線を移して見ると、また違うサッカーの見え方が出てくるかもしれません。